K氏のソムリエへの長くて短い道

昨年の受講生。JSA認定ソムリエ。過去の職業経験等からソムリエを取得するも、現在の主な仕事はデザイナー兼ライター。東京生まれ、東京育ちながら、京都を愛するあまり数年前より移住。心は関西人なれど、バリバリの関東弁を話す。前世はブルゴーニュワイン好きのイタリア人、と自称する54歳。
第7話(最終回) 実技試験、そして合格・・・(2011.11月)

見出し実は一番緊張して、しかもドラマチックだったのは実技試験でした。ほかにもそういう受験生は多いと思うのですが、私の職務経歴は受験には問題は無いのですが、試験に出るようなパニエを使用した本格的なワインサービスは経験が無く、井上塾の対策講座で教わったことを家で繰り返し練習したのが唯一の経験だったのです。実技試験はいくつかのグループに分かれて行われましたが、幸か不幸か、私はその試験の一番最初のグループに割り当てられ、簡単な試験の説明が終わると、すぐに試験会場へと案内されました。多くの人がいた試験会場を出ると、廊下はシンとしています。緊張感が募ります。ふと前を見ると、廊下に立って案内をしていた知り合いのソムリエ I さんが、私が来るのを見て、目立たな いように小さくガッツポーズをしてくれました。それがものすごく心強く、何かが吹っ切れて落ち着けたような気がします。

見出し狭い会場に入ると、グループで横一列に整列させられ、試験が始まりました。5人が一斉にサービスを始めるのですが、自分が教わったとおりの動作をするのが精一杯で、他の人が何をしているのかなどは、全く目に入りません。何とか終わらせて元の位置に戻って振り返ると、試験官の前の白いクロスの上に大きなワインの染みができています。ドキッとしました。隣の受験生がワインをこぼしてしまったのです。その人に深く同情しましたが、それが自分でなかったことにホッとしなかったと言えば嘘になります。

見出し実技の後は試験会場には戻れず、荷物を持ってロビーに一人で降りて行きました。広いホテルのロビーでひとりでぽつんと座っていると、その時初めて「ああ、結果はともかく、これで本当に全部終わったんだな」という感慨が湧いてきました。その後ポツポツと井上塾の同窓生などが降りて来て、試験結果などを話していると、ずっと一緒に勉強していたパートナーも降りて来ました。パートナーは井上塾の中間試験で全国20位に入るような優等生タイプなのですが、反面ものすごく天然なところがあり、このときも、サービス問題だったテイスティングのポートを、最初は正解しておきながら、「ポートなんて簡単な問題が出るはずはない」と提出寸前に変更してしまったそうで、おそらくその時の試験でポートを正解できなかった、ただ一人の受験生なのではないかと思います。

見出しそれから合格発表までは、妙に澄んだ気持ちでした。全てが終わってホッとしたのでしょう。合格の瞬間はうれしかったですが、なぜか驚きはなく、当然という感じがしました。

見出し最後に、受講開始から終了までを振り返って思うのは、本当に井上塾に入って良かった、という気持ちです。正直、受講前は独学でも何とかなるだろうと思っていたのですが、実際の試験に向かい合ってみると、井上先生の優しいながらもびしっと気合いを入れる一言がなければ、とうてい合格は覚束なかったように思います。さらに、ついにワインの勉強だけではなくなってしまったパートナーをはじめ、井上塾では多くの人々と出会うことができた、ということも、いまでは私の大きな財産となっています。それら全てを与えてくれた井上塾と井上先生に深く感謝し、筆を置きたいと思います。ご愛読ありがとうございました。

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