K氏のソムリエへの長くて短い道

昨年の受講生。JSA認定ソムリエ。過去の職業経験等からソムリエを取得するも、現在の主な仕事はデザイナー兼ライター。東京生まれ、東京育ちながら、京都を愛するあまり数年前より移住。心は関西人なれど、バリバリの関東弁を話す。前世はブルゴーニュワイン好きのイタリア人、と自称する54歳。
第3話 年齢と共に記憶力は衰え、そして一問には一答がある(2011.7月)

見出し2度目の授業です。前回書いたようにちょっと調子に乗っていた私は、前回のオリエンテーションの時から全く教科書を開かない、という、ふざけた態度で授業に臨みました。しかも、テイスティングが当たらなかったので、勉強のためと称してワインを飲む量だけは増えていたのです。

見出しさて、席に座って授業が始まりました。今日の講師は女性です。元気でコケティッシュなI先生です。I先生は細い身体に似合わない大きな声で、「では教科書を開いて」と言うと、「これから読むところに線を引いてください」と言いました。そして、何やら凄い勢いで教科書を読んでいきます。「ワイン概論」です。え?サッカロなんとかって何?え?アルコールの化学式?どうやらそれは、教科書の中の重要事項のようです。今回は借りたボールペンではなく、自分のボールペンで必死に線を引きました。ところどころ説明を加えながら、重要事項を読み終わると、!先生はやおら、「以上の所は、次回までに全部覚えてきてください」と平然と言い放ちました。
え、え、えーーー?これ全部ーー?と思っていると、先生が、ちょっとサディスティックな笑顔で、「来週から授業の終わりに、どのくらい覚えてきたかテストをします」と言いました。

見出しテストです。テスト。私が、いやほとんどの人が、この世で最も嫌いなものベスト5に入れるだろうと思う「テスト」が毎回あるのです。しかも私の通っていたクラスは、やたらと若い女性、それも美人が揃っているクラスでした。この中で、テストができずに恥をかくことだけは避けなければなりません。
次の日から臨戦態勢に入った私は、教科書を開き、テストに備えるために勉強を始めることにしました。線を引いたところを読み、なんとか頭に入れようとします。井上塾では、覚えるべき項目を重要度順にA・B・Cでまとめた教材も、配布してくれます。それらを使って覚えようとするのですが、年齢と共に衰えた記憶力はいかんともしがたく、やけくそで飲み続けたワインのアルコールも手伝って、覚える端から、いや、覚える以上に忘れてゆきます。

見出しそして、そのころはたまたま毎週のように授業があったので、すぐに次の授業が来てしまいました。その授業もまた大量に線引きをし、暗澹たる気持ちになったところで、恐怖の一問一答が始まりました。まあ、まだ一週間しか勉強していないからできなくてもしょうがないよ、と自分を慰めながら他の人が答えるのを聞いていると、みんなけっこう覚えています。正直焦りました。しかし、私は持ち前の運の良さで、たまたま覚えていたところが質問され、なんとか1勝1敗1引き分け(?)くらいで最初の一問一答を切り抜けることができました。

見出し最後に先生が言いました。「次回の一問一答は、今回の範囲に加えて、今日線を引いたところも出しますから、必ず覚えてきて下さいね」
そうです。範囲はどんどん加算されてゆくのです。覚えていない所にまた新たに覚えなければいけない項目が増えてゆくのです。まるでヤミ金融の金利のように。
これが、合格まで続く一問一答地獄の始まりでした。

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